そもその福利厚生とは何か?
一般的には「使用者が、労働者やその家族の健康や生活の福祉を向上させるために行う諸施策」などと言われていますが、開業医の立場からもっと有り体に言えば「クリニックのスタッフに提供する給与以外の報酬」のこと。
その中には、法律にもとづく「法定福利厚生」にあたる社会保険(健康保険・厚生年金)と労働保険(雇用保険・労災保険)、「法定外福利厚生」にあたる慰安旅行やレクレーションがあります。
法定福利厚生
スタッフを雇うことでかかる社会保険・労働保険の保険料は、雇用者が全額・あるいは一部を払わなければならず、意外と高額になります。
スタッフを1人採用すると、給与とは別におよそ支払給与の15~20%ほど見ておく必要があります。
しかし個人で開業したような小規模なクリニックであれば、保険加入の対象とならない場合があります。労働保険については、スタッフを一人でも雇うならば医療施設の規模に関わらず加入義務が発生しますが、社会保険については常勤スタッフが5人未満の個人経営クリニックなら加入義務がなく任意加入となっています。
そのため、開業医の多くが、社会保険に未加入のままクリニックを開いています。
福利厚生を切り札に
しかし未加入のクリニックが多いということは、逆に考えれば「社会保険を求人採用における切り札」ととらえることも可能です。
現勤務先の病院での福利厚生に不満があり、転職をする方も少なくありません。
長く勤務していく、不満なく就職するには、やはり給与や勤務時間などの条件と合わせ、福利厚生の調っている病院に勤務することが理想です。
すなわち小規模クリニックにもかかわらずあえて社会保険を完備すれば、医療系の求職者に向けて「スタッフが働きやすい職場環境」というアピールができます。
能力のある人ほど、良い環境を求めて求職活動をするでしょうから、保険完備によって他クリニックとの差別化ができれば、より良いスタッフの確保が期待できます。
福利厚生の充実はスタッフの満足度の直に影響します。
スタッフの満足度はサービスにつながり、サービスの質は患者様の満足度につながります。
保険料負担の分は経費が増しますが、それは優秀な人材を集めるためのコスト、さらにはその優秀なスタッフにこれからずっと力を発揮し続けてもらうためのコストと考えれば、そう高いばかりではないでしょう。
福利厚生の充実がいちばんの増患対策かもしれません。